《大賞作品紹介》A
『フキコッチの成長記』

1年 女子

 ある日、突然電話が鳴った。「収集社でございますが、この度、我が“sixteen”誌の懸賞に当選したため後日商品をご発送いたします。それでは…」(ガチャ)。あっけにとられ、返事一つもできぬまま電話を切った。

 ―――そして数日後、家の玄関にはきらびやかな箱が一つあった。恐る恐る箱を開けると“二次不等式っち”が入っていた。説明書を片手に、裏の電池近くに差し込んであったプラスチックぽい紙を引き抜いた。(テケっ、テケっ)という音を出しながら、たまごが生まれた。そして待つこと5分後、が生まれた。(ピピ)と音がしていたのでご飯を与えることにした。Bボタンで決定。 を与えると、に変身した。

 また呼び出し音を発したので、何かと思うと“用無し”だった。(これは、躾をしなければ!)と思い、Aボタンを動かしBボタンを押すとといういい子になった。何の変化もないまま、五歳になる。

 お風呂に入れてあげようと思って、という入浴剤の入ったお風呂に入れた。気持ち良さそうに入っていた。あがってからしばらくするとに変身。それからは、飽きてしまいお世話をあまりしなかった。何かがおかしい、躾マークが一つ減っているのだ。躾ボタンを(ピっ)と押す。になり、。このときすでに15歳。“二次不等式っち”の寿命は16歳。しかし、15歳で最後の変身を遂げになった。

 そして、次の日の朝 という姿を残して天使になった。AボタンとCボタンを同時に押さない限り、いつまでも との点滅を続けていた。

♯寸評♯
 全体を構成する題材には意表を突かれました。二次不等式の解法手順が、成長記として物語が展開するところに興味を引きました。解法をよく理解しているように感じます。