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B 平成11年度 数学C「いろいろな曲線」

 生徒が進んで課題を見つけ,自ら学び,自ら考え,主体的に判断し,体験を通して,よりよく問題を解決しようとする資質や能力の育成が求められている。そのためには,教師が教えることを主体にした授業から,生徒が自ら学ぶことを主体にした授業に変革していかなければならない。コンピュータ利用の学習はその方法の一つであると考える。

  1. 教育課程について

     本校は全日制課程普通科10間口の大規模校で,1学年は自然学級編制,2〜3学年は生徒の進路に応じて類型別学級編制を行っている。
     ところで,理数離れが叫ばれているが,本校もその例外ではない。2年次からの類型選択で,理型2クラスの時代も過去にはあったが,現在は2学年も3学年も理型は1クラスであり,3学年では1クラスを2展開にせざるを得ない生徒の実態である。 現在の類型は,文T,1クラス,文U,8クラス,理型,1クラスとなっている。数学の単位数は右の表のとおりで,3学年理型の数学は,さらに1クラス42名を25名(工藤担当)と17名(時岡担当)の2展開で指導に当たっている。

  2. 指導対象生徒の実態

     私の担当している理型17名の集団は,数学の成績が下位の生徒で,しかも全員,数学Vおよび数学Cを必要としない進路希望を持った生徒である。今年度4月現在の進路希望は,私大理系希望4名,私大文系希望5名,看護含む専門学校希望7名,就職希望1名であった。

  3. コンピュータの設置状況と利用状況

     本校では,平成8年度に生徒用として,NEC・PC-9821V16が24台,教師用として,NEC・PC-9821V20が1台導入され,3階の数学教室に設置されている。これらのコンピュータは,PC-SEMIによってハード的につながっている。OSはWindows95で,平成10年8月,インターネットにもつながった。周辺機器として,レーザープリンタ,MOドライブ,イメージスキャナ,デジタルカメラなどが使える。
     利用状況は,MS-DOSの時代(平成4年度以降)は,文V(就職)クラスにワープロや表計算ソフトの利用がほとんど。Windowsになってからは,加えてペイントや関数グラフソフト,インターネットを体験させている。

  4. 年間学習指導計画

     本校では授業に使えるコンピュータは24台あり,3学年理型17名の人数では一人1台ずつコンピュータが使えるので,数学Cの一単元である「いろいろな曲線」については,関数グラフソフト「GRAPES」を利用して,コンピュータ利用の学習を年間学習指導計画(別掲)に盛り込んだ。

  5. 数学C 第2章「いろいろな曲線」の指導

     実際初めの2時間は,GRAPESのダウンロードやその使い方の説明とそれを使って書かせたグラフを,手書きで写させたレポート(別掲)を提出させた。その後は,GRAPESで書かせたグラフをワープロソフト「一太郎」に貼りつけさせ,カラープリンタを使ってレポートを提出させることにした。レポート課題は次の4つ(別掲)で,教科書に載っている式のグラフを書かせ,パラメータの変化がグラフにおいてどのような意味を持つか考えさせる課題である。コンピュータを利用した授業は24時間行った。

    【レポート1】式と図形(1)――1次関数から4次関数のグラフ
    【レポート2】式と図形(2)――分数関数,三角関数,指数関数,対数関数のグラフ
    【レポート3】二次曲線――二次曲線のグラフ
    【レポート4】媒介変数表示と極座標――媒介変数表示と極座標で表されるグラフ

     レポートを提出させた後は,再度普通教室でレポート1から4までの内容の復習授業を8時間行い,2学期中間考査を実施した。

  6. 2学期中間考査

    10月に実施の2学期中間考査は,数学教室でコンピュータ(GRAPES)を使わせたペーパー試験を行った。生徒の解答は,まさに自分の言葉で書かれてあった(別掲)。グラフの変化や特徴を頭から画一的に教え込むのではなく,まず自分自身が操作しながら観察し,考えたことを表現して他の生徒と比べていく中から学んでいくといった過程があったからであろう。

  7. コンピュータ授業アンケート

     コンピュータ(GRAPES)を利用した授業についてアンケートを行った結果,ほとんどの生徒が「楽しい」,「授業でもっとコンピュータを使いたい」という感想であり,数学が苦手な生徒でも自分で入力した式のグラフが画面上に現れることに感動し,グラフを変化させながら学習を深めたようだ。中には,「式を間違えるとグラフも違う。」とか,「わからなかった所も見えてくる。」,「グラフの細かいところがよく分かった。」という,まさにこちらのねらい通りの感想もあった。つまり「何故だろう」とか「発見」であり,このことが,「自ら学ぶ力」につながっていくと思う。

    (1) GRAPES利用の授業の感想


    (2) GRAPESの利点と改善点

    (3) 期待するコンピュータ利用の授業

    (4) コンピュータを授業に活用してよかったこと

    (5) 発見や関心,意欲について

    (6) GRAPESの便利な点

  8. 反省点や今後の課題

     コンピュータの操作やソフトの使い方など必要最小限の基礎・基本だけを説明して,全32時間の内,4分の3はコンピュータを利用し生徒に主体的にやらせた授業,少なくとも従来の黒板とチョーク中心の授業とは一味違った授業になったと思う。生徒はコンピュータを活用して意欲的に課題を解決しようとし,分からないことがあればどんどん質問してくれるなど教師は生徒の学習の支援に徹することができた。また,個々の進度や習熟に応じた学習が可能になった。その結果,生徒はいろいろな曲線に親しんでくれたと思うし,発見や感動,満足感,充実感なども味わうことができたと思う。数学的には,パラメータの変化がグラフにおいてどのような意味を持つか考えられるようになったり,予想したりすることができるようになったと思う。
     しかし,反省点や今後の課題も多々ある。生徒の感想の中に,「コンピュータがないと出来ないので自分の手できちんと書けるようになりたい」とか,「やっぱり全体的にGRAPESを使いすぎていると思う。もう少し自力で考えることもしなければ,身にならない。」,「パソコンでやったことを追いかけるというよりは,同時進行でやってほしい。」など,コンピュータ利用の授業と普通教室での授業との時間的なバランスや調和を研究していく課題が残った。他の面では,

     以上,今後に生かしていきたい。

    ⇒ 学習指導案
    ⇒ 数学VC 学習プリント
    ⇒ 提出された手書きレポートから
    ⇒ 数学VC レポート課題
    ⇒ 提出されたワープロによるレポートから レポート課題@
    ⇒ 提出されたワープロによるレポートから レポート課題A
    ⇒ 提出されたワープロによるレポートから レポート課題B
    ⇒ 提出されたワープロによるレポートから レポート課題C
    ⇒ 2学期中間考査における生徒の解答から 
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