次期学習指導要領における情報科(仮称)の設置について(私見)
次期学習指導要領における情報科(仮称)の設置について(私見)

 昨年('96)の7月に中教審の第一次答申として「21世紀を展望した我が国の教育の在り方について」が発表された。この中で高度情報化時代を見据え、情報教育の体系的な実施の必要性が指摘された。特に、情報ネットワークの活用による学校教育の質的改善のために、様々な環境整備が急務であると述べられている。

 また、今年('97)9月に情報教育推進の調査研究協力者会議第1次報告の中で、次期学習指導要領においては、高等学校普通教育に関する教科「情報(仮称)」を設置することが提案されている。さらに、新教科は「可能な限り必修にすることが望ましい」と述べられている。

 11月に出された「教育課程の基準の改善の基本方向について(中間まとめ)」の中でも、教科「情報(仮称)」を設け情報活用能力のための“知識・技能”を習得させるよう提言されている。審議会では来年'98秋を目途に答申をするようである。

 現在の指導要領においても情報科目の設置は可能であるが、現実的には普通高校で新しい科目を設置しているのはごくまれである。また、数学のカリキュラム面から見た場合にも、現行の数学A,B,Cにおいてコンピュータに関する部分を内容を選択して履修することは可能であるが、ほとんどの学校で履修されてはいない。こうした現状から考えた場合、真に現場に情報教育を浸透させようと考えるなら、新教科の設置と必修化は最も実効性がある方法と考えられる。

 そうなった場合、現場サイドにとってはかなりグローバルな変革といっていいであろう。しかし、内容面、環境面、人材面など様々な問題が考えられ、スムーズな導入は困難であることが予想される。特に私が危惧するのは、「情報科」が単なる現在の商業科目の延長のような形になるのであれば、情報活用のテクニックの習得に偏り、情報活用による科学的な理解力養成が損なわれる危険性があるのではないかという点である。情報教育をすべて「情報科」に押しつけ、全体的な情報教育が後退する危険性があるような気がする。こうした点を踏まえ、「情報科」で扱う内容をきちんと体系づけて吟味する必要があるのではないであろうか。

<参考資料>

<関連資料>

【情報科の設置と必修化?〜ML「mathedu」の議論の中から〜】
【数学Aにおけるコンピュータの基礎:新課程におけるコンピュータ(私見)】
【科目「数学C」の性格と取り扱いについて(私見) 】