第21回北数教数学教育実践研究会 H9.8.4
科 目 | 数 学 U |
教 科 書 | 数研出版 新編数学U |
副 教 材 | 数研出版 エディノート数学U |
単 元 | 第4章 微分法・積分法 第3節 積 分 法 |
授業時間 | 5単位時間 (1単位時間50分) |
教 材 | 別紙プリント4枚 |
積 分 の 教 材 に つ い て
平成8年11月30日に行われた第18回北数教数学教育実践研究会で、石狩南高校の清水先生より、「3時間でやる積分入門」というレポートを発表されました。清水先生の指導では、プリントを用いて積分とは何か,積分の記号の意味などが取っつきやすいように工夫されて説明されており、生徒も「わかりやすく意外と簡単だった」などの感想を持ったそうです。私も、積分を指導する際には、おおよそ清水先生が報告された形で指導してきました。(進学クラスを持ったときは機械的に公式を説明して演習に重点を置いたこともあったが)。今年度は2年生を担当しており積分は3学期に指導する予定でしたので、清水先生のレポートを参考にさせてもらい、今まで自分が行ってきた指導内容を整理して、私もプリントを用いて指導してみることにしました。
授 業 を 実 施 し た 生 徒 の 状 況 に つ い て
本校では、2年次から4つの類型を設けています。
文 型:文系大学・短大進学希望者 1クラス
理 型:理系大学・短大進学希望者 1クラス
文理型:文系理系大学・短大・専門学校進学希望者および就職希望者6クラス
芸術型:音楽コース 1クラス 美術コース 1クラス
このレポートは、文理型の生徒に対する指導の実践報告です。4つの類型の中では、文理型に学習意欲,進路意識の低い生徒が集まります。そのため、授業も、油断すると私語が多くなったり後ろの方で居眠りをする生徒が出るので、できるだけ興味関心を持たせるような授業を心がけなければなりません。また、あまり長い時間説明が続かないよう配慮しています。熱心に授業を聞く生徒も多いのですが、質問はほとんど出ず、逆に私に質問されて初めてわからないところがあることを認識するといった状況です。
指 導 記 録 と プ リ ン ト
この積分の指導は文理型2年1組,5組,9組の3クラスで実施しましたが、2年1組での実践についてレポートします。
◎ 第1時間目 | プリント:No1− 積分1:積分とはそして区分求積法 − 実施日時:2月13日1校時 プリントNo1の最初から問題2の内容についてまで。 |
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◎ 第2時間目 | プリント:No1− 積分1:積分とはそして区分求積法 − プリント:No2− 積分2:ニュ−トンの発見 − 実施日時:2月14日6校時 プリントNo1問題2からプリントNo2ニュートンの発見を書くところまで(左側半分)。 この授業はデジタルカメラおよびビデオで記録。 |
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◎ 第3時間目 | プリント:No2− 積分2:ニュ−トンの発見 − 実施日時:2月17日5校時 ニュートンの発見のについての発表からプリントNo2終了まで。 |
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◎ 第4時間目 | プリント:No3− 積分3:記号づくりの名手ライプニッツ登場 − 実施日時:2月18日6校時 アンケートを行い、これまでの授業の感想を聞く。 アンケート終了後、プリント3の最初から問題5まで。 |
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◎ 第5時間目 | プリント:No4− 積分4:二つの積分 − 実施日時:2月19日3校時 プリントNo4終了後、教科書の例16の説明まで。 |
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次に使用したプリントをリンクしてあります。
【プリント1】 【プリント2】 【プリント3】 【プリント4】
生 徒 の 感 想 ―アンケートより―
積分に入ってから3時間目の授業が終了した時点で、今までの授業についてアンケートを採りました。積分の導入についての生徒の感想を知るためには、これからの時間は演習が多くなってくるので、この時点でアンケートを採った方が導入に関する感想がよくわかると考えました。アンケートといっても特に項目は設けず、B6版の何も書いていない用紙に自由に感想を書いてもらいました。
しかし、アンケート実施時の私の説明が不十分だったのか、今回の積分の授業に対しての感想ではなくて、プリント授業についての意見や感想を書いてきた生徒が多数おり、書いてほしい内容についてもっと具体的に説明すれば良かったと反省しています。以下 に生徒の感想をそのまま掲載します。
− 男 子 −- プリント授業の方が僕はわかりやすいです。ふつうの授業もわかりやすいけど、たまに 困ることもあるので、プリントの方が僕はいいと思います。
- プリントで昔の出来事などを見ながら問題を解いていったのでわかりやすかった。
- おいらはプリントの方がわかりやすいと思う。やらなければならないこともわかりやす くていい。プリントはおもしろい。
- プリントを使った授業はとてもわかりやすかったと思う。時代をさかのぼりながらの学 習はアルキメデスなど古人の考えていたこととかわかり、楽しい授業だった。
- プリントだと説明がすでにのっており、自分のペースで理解できる。かつ公式と問題を見比べて説明を生かすことによりさらに深く問題を理解できると共に公式をただ暗記ではなくなぜこのような定義が生まれなぜ公式がこのような形となりどのように公式が成り立つかが、学級全員で思案することにより楽しくかつ克明に覚えることができる理点を持つ。さらに深く追求するならば、先生が黒板に問題を書いたり私たちがそれを書き写すという作業がすでに出来上がっているプリントのために省かれるため効率が大変良いと思う。
- プリントの方が最初から図とか書いてあってわかりやすかった。
- プリント授業の方がわかりやすかった。
- 後で振り返るときはプリントの方がわかりやすいと思う。
- 授業のやり方もいいと思います。
- 時間がかかるかもしれないけれど、プリントでやるより、ノートに自分でまとめる方が覚えると思うしテスト前に復習しやすいと思う。
- 微分の逆の計算は少し難しい。なぜ関数を微分の逆の計算をすると面積が求められるのかわからない。
- 今回の数学は難しすぎず甘からず辛からずうまからず。積分と聞きますととてもおかしそうに思いましたが、思ったより簡単でした。
- 普段の勉強よりは幾分優しい感じがした。
- とても分かりやすくて良かった。でも忘れたら意味がないので気をつけようと思う。
- プリント1では面倒くさい計算で答えを出したけれど、プリント2にはいってという法則がわかったので、とても計算がしやすくなった。
- 普通に教科書,ノートを使って授業して行くより楽しくできたし、ノートにかくて間を省けて楽ができたのでけっこう良かった。もっとこういう授業をしてほしいです。
- 積分は結構簡単だった。でもプリント3で変な記号が出てきたので心配だ。
− 女 子 −- プリントだけを見たらとても難しそうに思えたけれど、やっていくにつれてわかってき て、結構簡単だった。計算になれていくことが必要だと思いました。こういう計算・面 積の求め方などを発見する人はとっても天才なんだろうと思います。私が授業中に教えてもらってもわからなっかったりするのに、それを発見する人ってやっぱりすごい人です。ビデオの時結構緊張しました。
- わかりやすいと言えば、わかりやすかったかもしれないけれど、特にわからなかったと 言えば、わからなっかったかもしれない。でもなんか、教科書よりは自分なりにスム−ズに進めたし、説明(問題の)も全然わかりやすくて、理解するもに時間がかかりませんでした。
- プリントは計算しやすいように説明やわかりやすい図があって、教科書に書いてあるこ とより理解しやすかった。面積を積分する計算の時は、図がないとわかりづらいので、最初からプリントに図が書いてあってよかった。テストの前に見直すとき、プリントの方がまとまっていて勉強しやすいと思う。
- 教科書でやるよりプリントでやった方が楽しかったけれど、プリントだと忘れやすいから怖かった。教科書の順番通りに進んでいなかったから、本当に進んでいるのか不安だった。でも何ぺ−ジもめくった後にあったから安心した。
- 普段の授業より楽だけど、プリントを忘れられなくてちょっと辛いかもしれない。
- 今までのとちょっと違った授業のやり方で、おもしろいと思った。面積を微分したのと関数が同じだということは全然気づかなくて大変だった。ビデオを撮っていたので相談しにくかった。できればやめてほしかった。
- 積分はメチャ難しそうでやる前からやだったけれど、プリントわかりやすかったから意外とできた。でも、ニュ−トンはあまり好きではありません。
- プリント授業は、教科書を使うよりもわかりやすかった。中学の数学授業がこんな感じだったから、全く抵抗なしに受けれたしプリントだったらパっと見た時に何やったかすぐわかるしいいと思う。
- プリント授業は良かったと思う。なんか普通よりわかりやすかった気がする。(できるかは別ですけど)中学の時もプリントをよく使った授業があったので良かった。教科書は本当によくわからないところが多いと思う。
- プリントを読んで理解しながら授業を受けてみて、図とかも詳しく書かれていてわかりやすかった。テスト勉強の時に、プリントにまとめてあると復習しやすい。
- プリントに書き込んでいく授業はわかりやすいし、あんまり書かなくてすむので好きです。でも、積分の理屈があまりわからないような気がする。何でビデオを撮ったのかなと思った。理屈は難しいけどやり方は結構簡単だと思った。
- 微分と積分は互いに逆ということはわかったけれど、とても難しい。ニュ−トンも余計なことを発見してくれてもんだと思った。さらに数学が私の中で遠い存在になったような気がする。
- ワ−クで授業を受けている感じでやりやすかった。図が細かく載っているので見やすい。積分を簡単に覚えることができた。
- 普通にノ−トとるより楽だし、わかりやすかった。テスト勉強で見直しやすいと思う。
- プリントだとバラバラして無くしたり落としたりしやすくて大変だけど、内容がわかりやすっかたから別にいいと思う。ただ、プリント学習で教科書を使わないのなら、持ってこなくてもいいようにしてほしかった。撮ったビデオは誰が見るのか、何で撮ったのかがわからないから教えてもらいたい。
- 教科書の授業より、プリントの授業の方がわかりやすかったからやる気が出た。
- 細かく分けて、かけて、たすという積分を考えたアルキメデスはすごいと思った。
- 最初の棒グラフをたくさん作って面積を求めるときは面倒くさかったし、何をやっているかわからなかった。基本定理に当てはめるのは簡単だけど、やっぱり積分して何のためになるかわからないし、積分の授業はあまり好きじゃない。
- 最初はややっこしい計算をして、「こんな計算面倒だし、場所取るしいやだ!」と思ったけど、問題3、問題4みたいな少ない計算だったら、答えがきちんとあっていたら楽しい。…かもしれない。ビデオ撮っていたことは結構イヤだった。きっとカメラ目線で映っていると思うので見たくない。見る機会がなければいいと思う。あとビデオを撮 るのももうイヤだ。写真とかの方がまだいい。
- いつもとは違った感じでたまにはこういう授業もいいなと思いました。プリントもひたすら計算ばかりするのではなく、みんなの意見なども聞いたりして、それで結論などを書いたりして、とてもわかりやすかったです。
- グラフとかが最初から書いてあるので、自分でノ−トに書く手間がかからなくて良かった。ノ−トに書きながら説明を聞いたりすると途中で訳が分からなくなることがあるけれど、プリントだと集中して説明が聞けるので、いつもよりわかりやすかった。裏に書いてある発見だとかもいろいろ興味深いことだなあと思った。
- わかった。プリントなくしそう。間違って捨てそう。結構読むのめんどくさいけど別にイヤなわけでわない。微分の逆の計算結構難しい。訳が分からなくなる。
- プリントの方が全体的に読みやすいしわかりやすかったと思う。「積分」について、最初からよく理解できるようになっていると思う。教科書は「説明終わりました。はい「問題」という感じだけどプリントでニュ−トンの発明とかで積分を楽しく学べたと思う。 なんか自分で、自分なりによくマスタ−できたんじゃないかなと思う。
- デジタルカメラをはじめて見た。でも仕組みがよくわからない。知りたい。←の面積を出すのがわかりにくかった。
指 導 を 終 え て
今回の指導では、授業中の生徒の様子やアンケートの結果から、興味関心を持たせるという点では幾分の成果を上げることはできたのではないかと感じています。しかし、時間がかかりすぎて、この後の演習に十分な時間をかけることができませんでした。
次回の指導では、
- 1枚のプリントで1時間の授業になるように、1枚のプリントの学習量を調整する。
- 高校の範囲を越えないできるだけごまかしのない面積S(x)の求め方をプリントに載せる。(説明はしない)
- 微分の逆の計算(積分)を、わかりやすい例を多くプリントに載せ、計算するときに参考にできるようにする。
- プリント4枚を5時間で指導したが、4時間で指導できるように工夫する。
といった点を改善したいと考えています。 この実践報告を読んだ先生方からご意見をいただき改良していきたいと考えています。どんな感想でもかまいません。下記まで送っていただければ幸いです。